#1「逃げる女煮つまる女」

舞台は1983年、28点のテストを燃やしている女子中学生。そこにやって来た双子の女の子達。「どうせ1999年になったらハルマゲドンで世界が滅亡しちゃうんだから、そんな事しなくていいのに。」「ハルマゲドン?」「ノストラダムスの大予言だよ。」「…あ、カレーの匂い。」「これもみんな、なくなっちゃうのかなあ。」
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そして20年後の2003年、世界は滅亡してない。早川基子(小林聡美)は信用金庫のベテランOL。同期の馬場万里子(小泉今日子)と暗い会議室で昼の弁当を食べつつ、上辺だけのどうでもいい会話をしてる。「実は私、飛行機乗った事ないんだよね。」「私も。」「じゃあ大トロは?」「食べたことない。」「やっぱりねえ。」とつくづく地味な二人。ところがその日の午後、早退した万里子が三億円を横領したと聞いて、基子は仰天するのだった…。

えー、私はドラマを、まずは一回普通に流して見ます。その後キャプ画を作る為にもう一回再生するんですが、時間もないのであらかじめ「あそことあそこにしよう」と大体考えておいてから早送りして、そこの画面をキャプチャするんですね。しかしこのドラマは、早送りしようと思いつつ、ついまたもう一回見入ってしまいました。しかもまた泣いてしまいました…。いや、本来はコメディだと思うし、笑える場面もたくさんあるんだけど、泣けてしょうがなかった。これはヤバい。何しろ基子と私の境遇が似すぎている。いや、ここまで煮詰まってないと思いたいけど、ハマるなって方が無理です。

私「7月期の展望」みたいな日記でこの「すいか」について、「昔の大人向け日テレドラマ(ちょっとマイウエイとか)みたいな感じだったらいいなあ」と軽い気持ちで書いたんですが、日テレはその気だったんですね。ここ最近ドラマのレベル低下が叫ばれつつも、結局視聴率を取るのは「GOOD LUCK!!」か「渡る世間」みたいなものになっちゃって、制作側のモチベーション下がってんじゃない?もう昔みたいな作品は作れないんじゃない?って思ってたんですけどね。なんだ、こういうの作れるんじゃん!確かにジャニーズもモデル上がりの美男美女も出ないし、ドロドロした恋愛や猟奇殺人があるわけじゃない。でもこういうのを待ってたんだってば!

初回に出てきた男性は、信用金庫の上司と大学の生徒ぐらい。基子も万里子もハピネス三茶の住人も、男っ気は全くなさそう。私、確かに男がたくさん出てくるドラマ好きですよ。でもこういう女同士の友情を描いたものも、同じくらい好きなのね。もう既に全員のキャラが愛おしくてしょうがない。結婚してからの女優キョンキョンはいいと思った事なかったのに、この万里子は良かったです。小林&ともさかは安心して見てられる。市川実日子ちゃんは一番若いのに、大家さんで賄い担当ってのがいいなあ。子供がそのまま大きくなったような、天真爛漫でくるくる変わる表情が面白い。そしてそしてルリ子様!期待通り美しく格好良く、ちょっと抜けててかわいい!あー最高。来週から高橋克実さんと金子貴俊君が出るみたいだけど、この二人なら「女だけの世界」を壊さないでいてくれるでしょう。イケメンライダーとかが出てなくて、本当に良かった。

そして役者さん達も素晴らしいんだけど、セリフが凄くいいんです。思わず書き留めてしまいたくなるぐらい。まず逃亡した万里子が基子に電話をかけて来た時のセリフ。

「今日ね、生まれて初めて飛行機乗ったよ。うん、ビジネスクラス。思ったより普通だった。ブランド品も山ほど買ったけど、あんまり面白くなかったなあ。あたし、道間違えちゃったみたい…。ハヤカワー、緑が目にしみるってほんとだぞ。お金なんかなくたって、人生楽しめたのかもなあ、なんつって、三億使った私が言うのも変だけど。間違えさえしなけりゃ、人生楽しかったのかも。ハヤカワー、いい人生送れよ。」

電話を切った基子が泣いていると、「大丈夫?」とハンカチを差し出してくれたのが夏子(浅丘ルリ子)。基子は彼女を追って、ハピネス三茶へ…。そしてそこで会った絆(ともさか)が、20年前の双子の片割れだとわかった時の基子との会話。

基子「あの生意気な子は?今何してんですか?」
絆「死んじゃいました。」
基子「え?死んだって…。」
絆「ほんとに滅亡しちゃいました。1999年に。いいとこに就職して、恋人も出来て、何もかも絶好調ですって時に、逝っちゃいました。お姉ちゃんと一緒に、私も滅亡しちゃったみたい。あの日から私って、終わった世界をダラダラ生きてるだけなのかもしれませんねえ。あ、死ぬの私だったら良かったのに。そしたら泣く人も少なくて済んだし、その方が効率がいいっていうの?」
基子「そんなこと言うもんじゃありません!」
絆「だって、ほんとのことだもん。」
基子「誰が死んだって、同じくらい悲しいに決まってるでしょ。」
絆「そうかな。」
基子「そうです。」
二人「…」
絆「三人でいたとき、あの時も今みたいにカレーの匂いしましたね。」
基子「こんなにカレーの匂いしてんのに、…そうですか。今いないんですか…。」

そして皆で一緒にカレーを食べ、夏子とゆか(市川実日子)と近所のバーへ。絆は?と聞くと、仕事に戻ったという。彼女は現在所持金83円なのだとか。

夏子「あなた、この世にそんな女がいるなんて信じられないって思いましたね?今。」
基子「…はい。」
夏子「それは違います。色々いていいんです。」
基子「…私みたいなもんも、いていいんですかね?」
夏子「いてよし。」

うなづく基子。そしてハピネス三茶に戻った基子は、絆に所持金を全部渡す。今まで34年間、一度も人に金を貸した事がなかったけど、あなたならいいかと思って、と。絶対他人を入れた事がない絆の部屋に、基子がいるのに驚くゆか。どうやら基子が次の下宿人になりそう?そしてゆかは海外の父にメールを送る。

「今日、今年初めてのすいかを買いました。半分に切ったやつです。いつか、下宿人でいっぱいになったら、すいかを丸々一個買おうと思います。そんな日が来るように、お父さんもスリランカで祈って下さい。ゆか。」

そして家への帰り道、万里子に向けて独り言をつぶやく基子。

「ああ、長い一日だったねえ、馬場ちゃん。私もうち出てみよっかなあ。私みたいなもんでも、一人で生きて行けますかねえ。ねえ?どうですかねえ?」


この双子ちゃん、なかなかともさかに似てる。

節電の為、電気を消された会議室で食べる昼食。うお〜リアルじゃあ〜!

ルリ子様のメイクは、80〜90年代にはひどく浮いて見えましたが、今では案外普通な感じでした。時代が一周して追いついて来たのか…。

ちょっと大林宣彦チックな回想シーン。

実日子ちゃんとともさかのファッションもかわいい。

出たあ!白石加代子!煎餅食べるのにここまで怖い顔する人、初めて見ました。

基子と出会った事で、絆も変わった?彼女は売れないエロ漫画家で、漫画はカトリーヌあやこさんが描いてます。

なんかすいません、無意味に長くなっちゃいました。この長さで察していただける通り、マジでオススメです。ドラマなんて見ないという人も、とりあえずこれだけ見てみて下さい。特に20代後半以上の女性におすすめ。